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【Grand Seiko / グランドセイコー】メカニカルモデル製造の地「グランドセイコースタジオ 雫石」に思いを馳せて。


グランドセイコーの機械式モデル製造の地「グランドセイコースタジオ 雫石」。
2020年7月20日、ブランド生誕60周年の節目の年に岩手県雫石町の地へオープンしました。今回、アイアイイスズのスタッフ数名で訪問させて頂きましたので、施設のご紹介を兼ねてその様子を皆様にお伝えさせて頂きます。



まずはじめに今回の「グランドセイコースタジオ 雫石」はセイコーウォッチの子会社である盛岡セイコーの敷地内に位置しております。盛岡セイコーでは、クレドールやグランドセイコー、プロスペックスの部品を製造しておりますが、2004年の9月に雫石の工場内に高級機械式時計だけを製造する特別な工房を設置しました。今回訪問させて頂いた「グランドセイコースタジオ 雫石」の前身とも言える「雫石高級時計工房」です。

 

現在ではその役目を終え、会社内部の部署として名前が残っておりますが、その匠の技と伝統を継承した工房としての機能とともに、グランドセイコーに特化したモノづくりを体感できる場として作られたのが今回の「グランドセイコースタジオ 雫石」となります。

設計を手掛けたのは国立競技場の建築に携わった隈研吾氏。岩手山に対して屋根を大きく跳ね上げ、建築の中からも周辺の自然が感じられる木造建築で、グランドセイコーのブランドフィロソフィ「THE NATURE OF TIME」を具現化したものと言われています。

 

ちなみにこちらの工場全体の敷地面積はおおよそ10万1000平米。東京ドーム2個以上の大きさとなります。自然との共存や環境保全の為に緑化率に力を入れており、盛岡セイコー全体の緑化率は37%。全国で見ても20%に満たないところがほとんどの中、この37%という数字は驚異的であり2023年には「緑化優良工場等東北経済産業局長表彰」を受賞しました。

スタジオのすぐ左隣にある「ゆりの木」は工房のシンボルとして親しまれており、その横にある積み上げられた木々はまさかの虫たちのための自然のホテルとのこと。

 

自然との共生を大切にするグランドセイコーらしい取り組みに感心したところで、スタジオの内部へ案内されます。 

こちらのエントランスでは過去のモデルや各ムーブメントの見本が展示されており、グランドセイコーのモノづくりの素晴らしさを解説して頂きました。

机の上にある顕微鏡に映し出されていたのはまさかの米粒と時計のネジ!!ネジから自分達で作る時計メーカーは国内外合わせてもごく一部です。

 

その先にある長い通路を進むと見えてきたのは、時計技師のいる組み立てを行う部屋です。

時計の組み立てを行うにあたってひとつの部屋で分担しながら作業を行うのは非常に稀で、海外の工房などでは職人一人が全ての作業を完結させることが多いです。さらには、サプライヤーから部品を調達し組み立てるスイスのような水平分業制とは違い、部品の製造から組み立てまで全てを行う盛岡セイコーを見て感じことは「マニュファクチュール」という言葉が浸透してそれなりの時間が経ちましたが、これほどまでに全ての工程が集約されている施設は世界的に見て例がなく、それを消費者にも開示しているこのスタジオは改めて「見せる為の工房」なのだということ。海外からの業界人もこの工房を訪れたときに感動してくれるそうなのですが、その理由も頷けます。

 

工房の逆に位置する裏口から一歩外に出ると、「わくわくトープ」と名付けられた人工的に作り出されたビオトープが広がっております。

 

中央に広がる池の水はコンテナ人工湿地によって濾過され綺麗な水へと生まれ変わっているそう。これらの設計は地元の大学の教授によって設計されておりますが、山奥などにある人間の手が全く加えられずとも美しい景観や水源を生み出す自然の力は改めてすごいなと感じさせられました。

まさにその現象って奇跡に近いものだと思うのですが、残念ながら現代においては工場やビル、施設の増加で自然がどんどん少なくなっていっております。自分自身も人間としてその恩恵を受けている一人のため、少し複雑な感情を抱く瞬間がありましたが、その感情に向き合う時間ってとても大切なんだなと思います。様々な企業が自然・環境施作に対して取り組みを行う中決して表面的な「イメージアップ」に留まらず、膨大なコストを裂いてでもこのような施設を作り、私たち消費者に対して気づきや考える時間を与えてくれるグランドセイコーに感謝の念を抱くと同時に、たくさんの方々にここを訪問して欲しいなと思います。

通常の工房への訪問ブログは製造の凄さやそのブランドの歴史にフォーカスすることが多いと思うのですが、今回は少し違う切り口でグランドセイコーの製品ではなく企業としての姿勢や精神を伝えたいと思いましたので少しでも皆様に伝われば嬉しく思います。

また今年の後半にもう一度グランドセイコーのイベントをアイアイイスズにて計画しておりますので、ぜひその際には皆様ご来場いただければと思います。ありがとうございました。

 

Grand Seiko / グランドセイコー

日本が世界に誇る、高級腕時計ブランド「グランドセイコー」。自然の持つ雄大な美しさや静かなる季節の移ろいからインスピレーションを受け、デザインされたその作品は国内のみならず世界中の多くのファンから愛され賞賛を浴びています。平面と直線を主体とした造形を施し光と陰の間に多様な表情を生み出す構造は「セイコースタイル」と呼ばれる独自のデザイン文法として親しまれています。「エレガンスコレクション」「ヘリテージコレクション」「スポーツコレクション」「エボリューション9コレクション」など、匠達によって日々多くの象徴的な作品が創り出されています。ムーブメントの開発から、製造、組立、調整、検査までをすべて自社で担う真のマニュファクチュールです。

この記事の監修者

山口 喬之(やまぐち たかゆき) 役職: セールススタッフ

大学時代に機械式時計の芸術性に心を打たれ、時計業界で働くことを決心。スタッフとしてだけでなく一時計ファンとしての対応を心がけている。

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